sh1’s diary

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バルタザール・グラシアン「賢者の教え」

どんな本?

スペインのイエズス会の高僧で学者バルタザール・グラシアン(1601年~1658年)の著書です。

17世紀前半といえば、スペイン黄金世紀でしょうか。
とはいえ、1580年にポルトガルを併合したあたりを最盛期とすると、繁栄したスペインが徐々に停滞・衰退する時期かもしれません。

そうした時代背景の中、著者が記した哲学は「人として立派に生きるには、まず人生を巧みに生きることだ」ということ。実際、著者は大変な人生を歩んでいることが書かれていました。

バルタザール・グラシアンの言葉は、とても啓発的な tips です。
活力に変わったり、悩んだときの道しるべにもなります。

どんなことばも自分にはね返ってくることを知れ

敵に対するときは、節度を保つためにも慎重に言葉を選べ。
鋭利なことばがつくる傷は、外科医には治せない。言葉を増し加えることはいくらでもできるが、一度口に出した言葉を引っ込めることはできない。それゆえ、聖書にあるように、口数が少なければ少ないほど、引き受けるべき結果も少なくてすむ。
どんな言葉もいずれは自分にはね返ってくることを知れ。風は一つの方向にだけ吹くものではないからだ。

意見をいうのはタダだから、どれだけいっても構わないと考えている者もいる。しかし、他人からその罰金を取り立てられるはめになって、彼らはそれが間違いであったことに気づく。
洞察にすぐれた者は柔和なことばと鋭い論理を用いる。言葉も石も、一度放たれればもう呼び戻せないのだ。(1章8)

つねに信頼できる友をもて

友人をもつことは、もう一つの人生をもつことである。
どんな友人も、何らかの益を与えてくれるものだ。分かち合うものが多いほど、学ぶことも多い。つねに幸福を願ってくれる友には礼節と経緯と理解を示せ。そうすれば、相手も同じものを返してくれるだろう。

日々、友をつくる努力をせよ。やがて信頼のおける親友が生まれる。
相手になにかを贈ることは、もっとも安全な友情の示し方である。真の友は寛大であり、その財布のひもはクモの糸に等しいという。(4章59)


個人的な感想

私は、あまりこうした学びや教えにも近い啓発の本を読むことがありませんでした。
なんとなく手にとって読んでみたのですが、悪くないなーと。
「達人プログラマー」や「アート・オブ・プロジェクトマネジメント」を読んだときのような気分になりました。

暗黙理や大切なことを、言葉直してもらった感じです。
ただし、主義・主張は、一貫しているかというとそうでもない。ただ、巧みに生きるとはどういうことか、こういうことだぞ、って感じはよく伝わる。

あとは、人間関係の悩みで困るのは、どの国、どの時代でも同じことなんだなぁと思いました。相手の言葉を自分のなかで考えすぎてしまうタイプは、どこかでこうした知恵をしっていると楽なのかもしれません。
少なくとも、突飛な結論で結ばれにくくするだけの効果は、あると思います。生きる上で誰かの「教え」を持つ人の気持ちが、なんとなくわかった気分になった本でした。

年を重ねるごとに性格は、凝り固まってしまうといいますが、ときどきは、こういう考え方を知って(歪んでいたかもしれない)自分を見つめ直すのは、よいことかもしれません。

鏡で自分の襟を見直すようなものかと。

Baltasar Gracián - Wikipedia