この記事で一番残したい・伝えたいことは「達意」です。
言わんとすることを、よくわかるように表すことである。
筆者の言わんとすることをはっきりと読者に伝えて、誤解の余地がないこと、あるいは極めて少ないことを要求する、といった当たり前のこと。
「自分の文章スタイル、文章ルールをつくる」という話。
これは、プログラミングなんかにもある「コーディングのルール」と同じ。
例えば、モデルやメソッドの名前をつけるときは、なんらかのルールに従って命名します。「変数」なら名詞の名前にするし、配列やコレクションなら複数形にする、といった当たり前のこと。名詞は可算名詞か不可算名詞か、動詞は他動詞か自動詞か、いちいち言わない暗黙的なルールもあって、コーディングの印象(クオリティ)に影響を及ぼします。(インデント、宣言、まとめ方、コメント、たくさん!)
慣れているはずの日本語でも、メールやチャットでやりとりをしていると、「この人の日本語感覚は、どうなっているんだろう? 自分が変なのか?」と疑問に感じることがあるわけです。悪いわけではないのですが。
個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。
(自分なりの)よい文章を書くために「文章スタイル」の確立しておきたいという話。(書いた内容の主張する“論理性”に秩序があるのは、達意においても大切なことだけど、ここでは読みやすい自分の文章スタイルに限ります)
よい文章、わかりやすい文章を書くのは、 そんなに難しいことではありません。 よい文章を書こう、わかりやすい文章を書こう、と考え、 それを心にいつもとめておくのです。
なお、書いた内容に、中身があるとかないとか、そういう辛い話ではないです……。
(私が)文章で気をつけるところ
以下、私の今思っているだけの文章スタイルの話です。(しかも、厳守ではないし、気をつけてる程度の話)
日本語の論文を書くとき文体に現れる「である」スタイルであるとか、小学校の国語教育の漢字スタイルとか、マイクロソフトのスタイルガイドのように、自分のスタイルをまとめたもの。
使い分け1
- ゆるす(許す or 赦す)のような(排他的ではない、明確な使い分けのない語、特に訓読み)は、ファジーでいい
(例):ボルガ博士、お許しください!(チャージマン研)
(例):わたしの罪を許しわたくしの呪をお解きください。(龍と詩人)
(例):すいません、ゆるしてください。なんでもしますから!(んっ? 今)
(例):お前を、赦す。 (STEINS;GATE) - 主に音読みの交ぜ書きは、なるべく避ける(あんまり伝わりやすくなった気がしない)
(例):混沌と混とん、憂鬱と憂うつ、猛禽類と猛きん類 - 主に訓読みの交ぜ書きは、(慣れていて)わかりやすいので使う
(例):子供と子ども、御湯とお湯、御飯とご飯、女達と女たち - 当て字は、なにか意図するときだけ使う
(例):彷徨うもの、可笑しい - 接続詞(また、しかし)や副詞(とにかく、ようやく、まず)は、ひらがなを先に考える(ファジーでいいけど、ひらがな優先思考)
(例):「ところでなにか用件があるのか?」(銀河英雄伝説) - (主に文はじまりの)接続詞や副詞のあとは、なるべく読点をつける(ファジーでいい)
(例):「しかし、総司令官閣下はそうおっしゃるが……」(銀河英雄伝説)
(例):「つまり、わが軍は敵にたいし、兵力の集中と機動性の両点において優位にたっている」(銀河英雄伝説) - 旧字と新字は、正字の概念がはっきりしない(自分には扱いきれない)ので、ファジーでいい1
(例):発酵と發酵と醱酵、日蝕と日食 - 形式名詞(ところ、こと、とき、ため等)は、ひらがなを使う(実質的な意味がみえないから)
(例):ローマにおいてワインが日常的なものになったことは、軍隊の糧食を見るとよくわかる。(ワインと世界史) - 例外はあっていい
(例):「ごきげんよう」(マリア様は見てる)
(例):我が生涯に一片の悔いなし(北斗の拳)
使い分け2(数字)2
- 日付は1日、2日と表す(一日、二日ではない)
- 慣用句やことわざは主に漢数字を使う
(例):一匹狼、一を聞いて十を知る - ひとつ、ふたつは、ひらがな
- 三つ四つが続いて現れるときは、漢字
- ひとりは「とある人」と置き換えできるときは、ひらがな or 漢字
(例):群衆の一人が話した - 慣用的に漢字を使うものは、それに従う
(例):四代目中村鴈次郎
(例):藤井聡太七段
使い分け3
- 名詞+名詞+名詞は、どこか助詞「の」が消せないか
(例):愛用のマウスのソール、愛用マウスのソール(窓の杜)
(例):究極の VAIO S のシリーズ、究極の VAIO S シリーズ(窓の杜) - 長い漢字の複合名詞は、強調したいところだけ(目がいくから)
(例):量子電導脳、演算処理能力、量子演算装置(マブラヴ)
文字間隔
- 日本語の文章中に英語があるときは、英語の文字の左右に半角スペースを挟む
(例):たとえば、この SerialPort オブジェクトから渡されたパラメーターが無効であるなどです。 (Microsoft Docs) - 区切り文字につぎに英語があるときは、半角スペースを作らない
(例):シリアル通信中に、DTR (Data Terminal Ready) シグナルを有効にする値を取得または設定します。 (Microsoft Docs)
区切り文字(約物1)
- 括弧やかぎ括弧の中は、文の最後に句点の“。”をつけない。3
(例):「星を見ておいでですか、殿下」(銀河英雄伝説より) - 括弧を使いたいとき、括弧の中に日本語が交じるなら全角の()を使う。
(例):~だと思う。(ときどき違うこともある)
(例):~だと思うんだ。(クラス SerialPort は別) - 括弧を使いたいとき、括弧の中が英語“だけ”なら、半角の () を使う。
- 括弧を使いたいとき、括弧の中が英語“だけ”なら、括弧の左右に半角スペースを加える
(例):シリアル通信中に、DTR (Data Terminal Ready) シグナルを有効にする値を取得または設定します。 (Microsoft Docs) - 二重山形“≪≫”は、創作・独自性の強い単語を強調したいときに使う
(例):ラウンダー (STEINS;GATE) - 墨付括弧“【】”は、辞書的な効果で単語を強調したいときに使う
約物2
- 三点リーダー“…”は、2つで1つを主として重んじる
(例):「いや、会ってやるさ。……奴らの蒙を啓くためにもな」(銀河英雄伝説) - ダッシュ“―”は、2つで1つを主として重んじる
(例):「――とは申しておりません、閣下」(銀河英雄伝説) - 感嘆符“!”と疑問符“?”は、1つまたは偶数とする
(例):「ありがとうございます、成松重工でございます!」(月に寄り添う乙女の作法)
(例):「嘘だッ!!!」(ひぐらしのなく頃に)※これはやりたくない例
(例):世界がヤバい!! (STEINS;GATE) - 感嘆符、疑問符のあとに文が続くときは全角スペースをひとつ入れる
(例):「朝日! さっきから何してる、私が挨拶を受けているのだから君も来い!」(月に寄り添う乙女の作法) - 2つの言語で表したいときは、主とする言語を左、副とする言語を右にする。2つの語を分割する文字は主とする言語にあわせる。
(例):【エスカレーター:Escalator】
その他
- 引用・参考にしたものがあるときは、ちゃんと出典元を書くこと!
- 他人に強制しないこと!!(正しい日本語講座をやらないこと!!)
更新・改定
こんな感じで、私なりの文章スタイル・ルールができつつあります。(現在進行系)
文章スタイル・ルールに従って書くようにしていますが、常に一貫性を完全に保つものでもない、と(私は)思うのです。文章スタイル・ルールは、更新・改定があったほうが便利。
A foolish consistency is the hobgoblin of little minds, adored by little statesmen and philosophers and divines.
あるときは「これがもっとも完璧な文章スタイルだ」と思っていても、自分はどんどん勉強をしています。われわれは、賢いので。
私の場合だと、今は実用書の書き方にあわせようと思って作りはじめているので、そこが変われば、また、だいぶ雰囲気も変わるかもしれません。 4
周囲の書く文章スタイルだって、時勢と共にすこしずつ変化しているので、伝わりやすい言葉も変わっているかもしれないし、言葉に新しいゆかりが生まれているかもしれない。
なので、ここでの文章スタイル・フォーマットの役割とは、
- もし、自分が書き言葉に無頓着で、思い浮かんだものを思い浮かんだままに出力しているなら、そのまえに心に作ったフォーマットを通して清書としてる。(格好をつけてる)
- 心にあるフォーマットは、うまずたゆまず良いものにする努力を続けていれば、地下水のように(ノウハウが)溜まっていく。出力するものを豊かに潤してくれるんじゃないかな、という話。
自分が納得するようにやればいいと思う。(他人に迷惑がかからない範囲で)
モテる文とモテない文がある。飛浩隆さんは息をするようにモテ文を書いている。
参考
- 作者:丸谷 才一
- 発売日: 1995/11/18
- メディア: 文庫
- 作者:ひさし, 井上
- 発売日: 1987/04/28
- メディア: 文庫