sh1’s diary

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EVO 暫定コントローラールール(超訳)

この記事は EVO が発表したコントローラーに関する曖昧さについて、トーナメントルールのガイドラインを個人的に超訳したものを公開しています。(間違いがあったらゴメンナサイ)

モチベーション(はじめに)

格闘ゲームコミュニティにおいて、カスタムされたコントローラーとコントローラーの設定変更の合法性(ルール)については、未解決の問題があって、プレイヤーと製品開発者の両方に不確実性をもたしています。

プレイヤーは、どんなコントローラーが合法なのかわからないので、従来のパッドやアケコンを選択することになっています。
このため、コントローラーの選択が限られてしまい、自分自身の好みに合わせた最適のコントローラー選択ができません。

コントローラーの開発会社は、新しくつくる製品がトーナメントに合法として利用できるのか不透明になっていて、製品のイノベーションを抑制している。

これらの不確実性を解決するために、EVO はサードパーティのコントローラーに向けたトーナメントルールを開発しました。2019年10月31日の完成を目指して、コミュニティのみんなからのオープンな意見を募集しています。

There are open questions as to the legality of custom controllers and controller modifications in the FGC. This has led to uncertainty both for players and product developers:
Players don't know what controllers will be tournament legal in the future, leading them to choose traditional gamepads and fightsticks. This limits choice for players, preventing players from choosing the very best controller according to their own personal taste.
Controller manufacturers are uncertain as to whether future products will be tournament legal, stifling innovation.
To resolve this uncertainty, Evo has developed these tournament rules for 3rd party controllers. We are posting them now for open feedback from the community, with the aim of finalizing them by October 31st 2019.

用語の定義

コントローラー (Controller):プレイヤーが操作してゲームを操作するデバイス。コントローラの例を次に示します。

  • ゲームパッド (Game pads)
  • ファイトスティック (Fight sticks)
  • 自作コントローラー (Home-brew controllers developed by players)

入力メカニズム (Input Mechanism)

プレイヤーがゲームをプレイするために操作するコントローラーにある任意のデバイスのこと。入力メカニズム(デバイス)の例を次に示します。

  • プッシュボタン (A digital pushbutton)
  • 1つ以上のプッシュボタンを機能できるレバー(例:ジョイスティック、ファイティングスティックなど通常よくみるやつ)
  • (センサー上をさっと動かすように設計された)アナログ入力をするレバー(例:コンソール・コントローラー PS4 とかの左スティック)

ゲーム入力 (Game Input)

プレイヤーが入力メカニズムを操作したとき、コントローラーからゲームに送信される信号のこと。ゲーム入力の例を次に示します。

  • X ボタンを押下する
  • L ボタンを押下する
  • アナログ R2 ボタンを 85% 押下する

ルール

コントローラーは、以下の規則に従っていれば EVO のトーナメントで合法です。(利用できます)

1.コントローラーは、単一入力から複数入力することができない。これは、同時入力(攻撃ボタンの同時入力)と連続的な入力(マクロの禁止)の両方を禁止します。
ひとつのボタンに複数の入力をゲーム内で割り当てることは許可されます。
規則3に記載されている場合を除いて、基本的な入力(上下右左)は、1のルールから除外されます。(つまり、斜め入力のボタンはセーフ)

  • ○ 特定の位置にあるとき、↓+→入力を送信するレバー。↓と→はどちらも基本的な方向であるため、ひとつの入力メカニズムで同時に有効にしていい。
  • ○ ゲーム内のコントローラー設定を使用して、ひとつのボタンに複数ボタン入力の機能を割り当てする。(例:R2 のボタンに PPP を設定)
  • × コントローラーのボタンを再配線して、3つのボタンを同時に押下する。(例:PPP を送信)
  • × 一連のゲーム入力を送信するマクロを組んだボタン。
  • × (左から右に動かすなどで)一連の入力を次々と送信するスライダーのようなもの。
  • × 押された強さに応じて入力が LP や LK などを送信するアナログ押しボタン。

2.コントローラーは規則1に違反しない限り、アナログ、または、デジタル入力メカニズムからゲーム入力を送信することができる。

  • ○ 押すと、アナログスティックが右側(75%)の位置にあるというゲーム入力を送信するプッシュボタン。
  • ○ ふたつのプッシュボタン(AとB)は、どちらか一方がホールドされている、あるいは両方がホールドされているかによって異なるアナログ出力を生成する。(例:R2アナログゲーム入力)
  • × ボタンが押されると入力が反転すること。これは、複数のゲーム入力を送信することになるので、規則1に違反します。

3.コントローラーは↑と↓、←と→との反対方向の入力を同時に送信してはいけない(may not)。(いわゆる simultaneously opposite cardinal directions = SOCD)SOCD 入力は、コントローラーのファームウェア更新で、コントローラーの SOCD 入力を除去します。

例外: PS4ゲームパッドはこのルールから明示的に除外する。
規則3は 2021年04月30に廃止する。

EVO は、格闘ゲームの開発者がゲームを設計する際にこのルールを考慮する(してほしい)ことを提案します。例を次に示します。

  • ゲーム設計者は A から B に進むためには1フレームの N(ニュートラル)が必要とロジックに追加してほしい。(例:振り向きガードは、←入力の連続、N、→入力になる必要がある)

  • ゲーム設計者は、意図しない不明な同時入力を無効としてほしい。(例:LとRを同時に保持することはゲームに対して意味のない入力なら、N にしてしまう)

既存デバイスへのルール適用

開発中の HitBOX Cross|Up は、コントローラーにある入力メカニズムをデバイス上の異なるところに再マッピングします。具体的には次に示すとおりです。

  • 左アナログスティックは、レバーに再マッピングされます
  • 通常の方向キーがボタンとして右側に配置された
  • ↑と↓、←と→の同時送信を防止する SOCD クリーナー

Hit Box Cross|Up は SOCDクリーナー を実装することでルール3違反を回避し、複数入力を送信しないので、トーナメントに合法的なデバイスです。

Hit Box Smash Box は Nintendo Gamecube Gamepad のアナログ機能の多くをデジタルボタンにマッピングする。たとえば、プレイヤーは、デジタル入力のコード (chords of d-input) を入力することによって特定のアナログ角度を動作させることができる。これは、規則2で許可されているので合法的にトーナメントで利用することができる。

Gafrobox は、特定の SOCD を実装していて、新しく押し直されたボタン入力が優先されます。たとえば、ユーザーが左ボタンを押し、右ボタンを押し、右ボタンを離すと、左、右、左の入力を送信します。この場合、3つのユーザー入力は3つの異なるゲーム入力の結果になったので、規則1に違反していません。また、Gafrobox は SOCD クリーニングを実装しており 右と左が同時にゲームに送信されることはなく、ルール3にも違反しません。よって、トーナメントで合法です。

トーナメントのプレイヤーの中には、PS4 のコントローラーを使った新しいグリップ(テクニック?)を開発した人もいます。アナログスティックで左を押しながら、デジタルパッドで右を押すようなことができます。規則3に違反することですが EVO 2020 では、これを例外規則として許可しています。なんで、EVO 2020 では PS4 のコントローラーは合法です。EVO 2021 だと、ルール3が廃止されるので、PS4 コントローラーは合法です。

2014年、トーナメントプレイヤーの Full Schedule がスティックにボタンを追加して、↑+←と↑+→を同時に有効にした。1回のボタン押下で複数の異なる方向が設定されているので、トーナメントで合法です。

まとめ

最終決定の前に、このルールについてのフィードバックをお願いします。EVO 2020 のために、これらのルールを決定することにコミュニティの参加することを楽しみにしています。
直接伝えたい特定のフィードバックがある場合は、件名「Evo Controller Ruleset Feedback」を添えて「mrwizard@shoryuken.com」までお送りください。

わたしの感想(要点の追加)

今回の暫定ルールは、CAPCOM の提示した CPT ルールと異なる解釈の部分がある。具体的には次。

  • 斜め入力のボタン OK
  • 2nd priority OK

CAPCOM は、競技において優位性をもたらすコントローラーの使用は、CPT 精神に沿わないというコメントしていた。しかし、実際的にウメハラ選手はガイルを使用するうえで、アーケードコントローラーよりもレバーレスコントローラー (hitbox) に長期的な優位性を見出して(か)コントローラーを変更しているなど、思想を打ち出した当初とは異なる様相の一面もあったと思う。ルールを満たす範囲で、ゲームが優位にあるためのコントローラー選好は今もあった、と考えるほうが妥当だと私は思う。ボタン押下の微妙な癖を自分にあわせて最適化する流れも、優位性を認めず均一なコントローラーを支持する思想とは異なる話だろうし。

その後、やはりというべきか Hit Box Cross|Up といったルールを上限いっぱいに解釈したコントローラーが出てきて、後から CAPCOM がルール追加して締め出しをするような状態は、両方ともに不誠実なところと不利益がある。これはよくない。

結局、コントローラーによって自分の選好にあわせたカスタマイズを認める決定にしたほうが、間口が広いしいいじゃんだけの話かもしれないし、この界隈はずっと自作コントローラーを認めてきたし、障害者の特殊なコントローラーを許容してきた文化がある、ってほうを大切にしたのかもしれない。

マチュアプレイヤーは、プロプレイヤーよりも不利で最適化しきれていないコントローラーで対戦することもあるかもしれない。もう一度、揉め直すことになるかもしれないけど、今度はどうなることか。

アケコン